白くてかわいいアザラシロボット
2025年には認知症高齢者の数が一気に増加するといわれています。国は認知症対策の一環として「新オレンジプラン」を策定し、認知症高齢者が住み慣れた地域で自分らしく生活を送れるような社会を実現するための取り組みを推し進めています。戦略の柱の1つとして「認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデルなどの研究開発および成果の普及の促進」を掲げており、その具体策としてロボット技術やICT技術を活用した機器の開発支援・普及促進が挙げられています。
このような状況の中で、高齢者が抱える問題を解消する一助となるロボットとして大和ハウス工業が開発したのが「パロ」です。パロは高齢者の孤独を癒すことができるロボットで、2002年には「世界で最もセラピー効果があるロボット」としてギネスに認定されました。また、フランスのパリ病院機構からは「2015 Patient’s Trophy賞」を授与されるなど、世界各国で高い評価を得ています。実際に、欧米の介護施設ではすでに導入が進められています。
就職などを理由に子どもが親元を離れることが多くなり、少子化や未婚率の上昇なども伴い家族と同居せず一人暮らしをしている高齢者が増えています。一人暮らしの高齢者が抱える問題として挙げられるのが、家族や社会からの孤立・孤独です。社会的に孤立した高齢者は強い孤独感を抱えており、他者と積極的に交流している高齢者と比べて認知症を発症するリスクが高くなることが分かっています。パロは、認知症の発症リスクを高める原因となる孤独感を癒す効果があります。
欧米では高い癒し効果が見込めるアニマルセラピーが広く普及しており、パロはこれと同様の効果が見込めます。アメリカではすでに「神経学的セラピー用医療機器」として認められています。ストレスの軽減やコミュニケーションの活性化などのメリットがあるだけでなく、アレルギーや噛みつきなどの心配がない点もメリットです。
パロはタテゴトアザラシの姿をしたかわいらしいロボットです。体長57㎝・重さ2.55㎏で、白いふわふわの毛に覆われています。首・前足・後ろ足・まぶたが稼働して、本物のタテゴトアザラシのように動きます。また、触れ合う相手や状況を感じるセンサーが搭載されており、「撫でる」「抱く」などの行動を認識できます。自分の名前を覚え、相手から発せられる言葉を学習します。そのため常に同じ反応をするのではなく、ふれあいを重ねるごとに反応が変わり、飼い主の好みに合わせて行動していくようになります。