孤独な高齢者が増えている
65歳以上の高齢者の一人暮らしの割合は年々増加傾向にあります。「高齢者の経済・生活環境に関する調査」によると、1980年時点で男性が約19万人、女性が約69万人、高齢者人口に占める割合では男性が4.3%、女性が11.2%だったのに対し、2010年には男性が約139万人、女性が341万人、高齢者人口に占める割合では男性が11.1%、女性が20.3%まで増加していることが分かっています。特に多いのは、75歳以上の女性です。また、高齢者の割合が一気に増加する2025年には男性が約230万人、女性は約470万人もの人が一人暮らしになると予想されています。
高齢者のグループ活動への参加状況は増加傾向にあります。2013年の時点で、60歳以上の人の約60%は何らかのグループ活動に参加しており、健康やスポーツ、趣味、地域行事などを通じてふれあいの場に参加しています。最近は健康やスポーツ関連のグループ活動に参加している高齢者が増えているようです。
高齢者の会話の頻度は、単身世帯を除く世帯の場合は「毎日している」という人が90%以上を占めますが、一人暮らしで毎日会話している人は75%程度にとどまっており、約15%の人は「2~3日に1度」しか会話をしていません。
人付き合いの頻度は、「よく付き合っている」「ある程度付き合っている」と回答した人は女性が80.7%、男性が73.8%で、男性の方が他者とコミュニケーションを取る機会が少なく、頼れる人が周囲にいない状況に陥っているケースもあるようです。
高齢者の一人暮らしには様々なリスクが潜んでいます。まず、「認知症が進行する」危険性が高まります。一人暮らしの高齢者が認知症を患った場合、地域の約束事を守れなくなり、近隣住民とのトラブルに発展する可能性があります。具体的には「ゴミ出しのルールを忘れる」「大声で騒ぐ」などの問題が考えられます。最悪の場合、今住んでいる住居から退去を命じられ、それがきっかけで事件に発展するケースもあります。
厚生労働省が発表した「都市部の高齢化対策の現状」によると、認知症を患っている高齢者の数は2010年の時点で280万人です。これに同年度の高齢者人口全体に占める一人暮らしの割合を重ねると、約88万人もの認知症高齢者が一人暮らしであることが分かります。さらに、2025年には認知症高齢者が約400万人まで増加し、37.2%の高齢者が一人暮らしになるといわれているため、一人暮らしの認知症高齢者の数は約150万人にもなると予想されます。
また、孤独死の問題についても考えなければなりません。東京23区内に限った調査ではありますが、65歳以上の高齢者が孤独死したケースは2003年の時点で1,441人だったのに対し、2012年には2,727人まで増加しています。